[ドーラディーン聖戦譚 〜Cal Pusreet Prume Lin〜] zynkwhite
《 序 章 》
「あーん、こんなジメジメした所、もーイヤッ!!」
足元のぬかるんだ暗い地下通路の中―――
金色の髪の少女が、半ば自棄(やけ)気味にそうぼやいた。
彼女の名は、リリン=フランク。半妖精(ハーフエルフ)の魔術師だ。
「そんなこと言ったって、ここを調べたいって言い出したのはリリンじゃないか。」
やれやれ、と言った感じでなだめるのはパーティーのリーダー、神官戦士のリュ−デュ=ネイヴァ。通称リュ−ド。
「だってぇ、お気に入りの靴が泥だらけなんだもん!」
「だから、汚れて困るような靴、履いてくるからだろ。」
こういったリリンのわがままは毎度の事だが、まじめな性格のリュ−ドはつい正直に対応してしまう。
「何よ、リュ−ドのイジワル!ディアも何とか言ってよ。」
突然話を振られ、先頭を歩いていた男は「・・・へ?」という表情で振り向いた。
長い黒髪から覗く尖った耳――彼はディア=クライシュ、エルフの精霊使いだ。
「ああ・・・オレもこういう場所は余り好きじゃないなあ。」
二人の会話を聞き流していたせいか、多少ズレた返事を返したディアだったが、リリンは満足したようだ。
「ほらぁ、ディアも不快だって。」
だがディアにはリリンとは別の理由があった。
本来森で暮らすエルフは、風や植物の精霊力の弱い地下などには決して入りたがらない。
「余り好きじゃない」程度で済むディアは、相当の変わり者なのだ。
「でもリリン、今更引き返すつもりもないんだろう?」
ディアの問いかけに、リリンは素直に頷いた。
「だって・・・この奥にきっと何かあるよ。酒場のマスターも言ってたし・・・」
自信無さ気にうつむいてしまったリリンを励ますようにリュ−ドが言った。
「じゃあ、俺が新しい靴を買ってやるよ。だから、もう少し頑張ろう、な?」
「ホント?」
ぱっと顔を輝かせて見つめ返すリリンに、一瞬しまった、と言うような眼をするリュ−ド。そんな二人のやりとりを、ディアは笑いをこらえつつ見守っている。
「ああ、この冒険が終わったら一緒に買いに行こう。」
「ありがと!リュ−ド大好き!!」
やれやれ、とため息をつきながらも、結局リリンに甘い自分に苦笑を禁じ得ないリュ−ドだった。

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